最高裁判所第二小法廷 昭和28年(あ)2551号 決定 1954年12月18日
主文
本件各上告を棄却する。
理由
被告人重田安平、同城勇両名の弁護人千島勲及び被告人小林金蔵の弁護人橋本重一の各上告趣意は、いずれも刑訴四〇五条の上告理由に当らない。また記録を調べても同四一一条を適用すべきものとは認められない。(弁護人橋本重一の所論第一点は違憲をいうが実質は単なる訴訟法違反の主張に帰する。そして記録を調べてみると原裁判所が原審第二回公判期日(昭和二八年二月一二日)に、次回公判期日を同年二月十七日と指定告知したこと、原審弁護人橋本重一において同日も他の裁判所の公判があるため差支がある旨の証明書を添えて同月一二日附変更申請をしたのにかかわらず、原裁判所が右期日にその変更申請を却下し国選弁護人を附して審理を遂げた上、判決言渡期日を同月二六日と指定告知し、同言渡期日に右原審弁護人橋本重一の弁論再開申請を却下して判決言渡をしたことは所論のとおりであるが、原審裁判所においては既に第一、二回公判期日をいずれも右弁護人の変更申請を容れて変更し、前記第二回公判期日に次回公判期日を二月一七日と指定するに当っては、同弁護人からは同月七日附変更申請があったに止まり、同申請には別段右二月一七日が同弁護人の支障日である旨の記載はなかったことであるし、右第三回公判期日においては新らたに選任された国選弁護人によって被告人の選任した前記原審弁護人提出の控訴趣意書に基いて弁論がされたこと、その控訴趣意書の内容も本件犯情等を掲げて原判決の量刑不当を主張する外、原判決認定の四十数個の犯罪事実中の一の賍物故買代金額の誤記を捉えて事実誤認を主張するものにすぎず、特に新らたな事実証拠の取調を要する趣旨でもないから原審の措置はまことに正当であって所論は理由がない。(昭和二六年(れ)第四九九号同年九月一四日第二小法廷判決、集五巻一〇号一九二八頁、昭和二五年(あ)第三一一七号同二七年七月八日第三小法廷判決、参照))
よって同四一四条、三八六条一項三号により裁判官全員一致の意見で主文のとおり決定する。
(裁判長裁判官 栗山 茂 裁判官 小谷勝重 裁判官 藤田八郎 裁判官 谷村唯一郎 裁判官 池田 克)